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たなばた

昔あるところに、とても貧しい ひとりの牛飼いが住んでおりました。
生まれてすぐに両親を失った彼には、哀れなことに名前すらありません。
人は皆 彼のことを只の牛引き、「牽牛」 と呼んで蔑んでおりました。

ある日のこと、牽牛が野良仕事から戻ってくると 荒れ果てたあばら家に似つかわしくない美しい一輪の花が活けてあります。
それからも部屋が綺麗に片付けられていたり 時には夕餉まで用意してあったりするのを不思議に思った彼は、出掛けるふりをして家の外から見張ることにしました。
すると何処からかひとりの美しい娘が現れ、慣れた様子で 女房のように甲斐甲斐しく部屋の掃除を始めるのでした。
隠れているのに我慢が出来なくなった牽牛は、遂に物陰から飛び出して娘に訳を尋ねます。

「貴方は身寄りもなく貧しい暮らしをしているけれど、心はとても美しい方。 その生き方に惹かれ、陰乍らお手伝いがしたくなってしまったのです」

牽牛はその娘「織女」に このままずっと傍に居てくれるように頼み込み、二人は幸せに暮らし始めます。
ところがこの織女 実は天界で神衣を織る役目を持つ娘で、毎日機を織ってばかりの暮らしを杞憂した天帝から しばしの休暇を許されて下界へ来ていただけのこと。 
たちまち天帝の遣いに見つかって 有無を言わさず引き戻され、幽閉されてしまいます。
嘆き悲しんだ牽牛は、可愛がっていた牛の不思議な力を借りて 天界を目指すのですが・・・彼女は下界の人間でなかったというだけでなく、何と天帝の孫娘。
元のように添い遂げられる筈もなく、荒れ狂う天の川に阻まれて 二人は引き裂かれてしまいます。
しかし何年経っても悲しみに暮れ 変わらず惹かれ合う二人を哀れに思った天帝は、とうとう年に一度だけ 天の川を渡って逢うことを許したのでした。

 天の川

これが天の川を巡る 牽牛と織女の物語
伝承が古いせいか、「織女は仕事に飽きて下界へ逃げていた天女であった」とか 「機を織ってばかりで化粧気も無い孫娘を心配した天帝が 牽牛を紹介したら、恋にハマってしまって仕事を投げ出した」とか、幾つもの違う展開がある民話です。
中には 「水浴びをしていたら 牽牛に衣を隠されて、天に帰れなくなった」 という日本の羽衣伝説と全く同じものまでありますが・・・中国では三大民話のひとつと言われる とても有名なお話。
あちらの七夕祭りは 『乞巧奠(きこうでん)』 と呼ばれ、色とりどりの糸を絹に刺したものをお供えして 織や裁縫の上達を星に願う行事となっています。
(この色糸は 途中で陰陽五行説と交じり合って、赤・青・黄・白・黒(紫)の 「五色の短冊」 となって日本にも残っていますね) 

ところで 二人が年に一度だけの逢瀬を許されたのは、太陰暦 (旧暦) の7月7日
世界的に見ても 殆どが太陽暦を採用している現代ですが、これは月の満ち欠けを基準にすると 一年ごとに大きな誤差が生じてきてしまうからです。
旧暦の7月7日を今の暦で計算してみると 2006年では7月31日、2012年には8月24日と、かなりのズレがあることが判ります。
かといって太陽暦だけで考えると大抵の年では まだ梅雨明けもしておらず、星合(ほしあい)の節句としては あまり相応しくない気候になってしまうんですね
そこで正確ではないにしろ、中を取って一ヶ月遅れの8月7日に七夕祭りをするという 仙台のような形を取る所も出てきたわけです。
今年、2011年はというと・・・8月6日、まさに今日なんですよ

因みに 僕が住んでいた大阪府池田市は、この七夕伝説と とても縁の深い場所だったりします。
千数百年前には大陸から織機の専門技術者を招聘していた、最先端の国際都市でした。
(技術者であった彼女達の名前も、「呉羽」・「綾羽」 という地名に――神として祀った神社と共に――ちゃんと残されています)
その織機とは 「たなばた」 といい、棚=横板が付いて 当時の機械としては性能を飛躍的に向上させたもの。
今ではもう途絶えていますが、七夕の夜には 「棚機女(たなばたつめ)」 と呼ばれる選ばれた女性達が 水辺で神聖な布を織りながら神の降臨を待つという神事がありました。
それで七夕を 「たなばた」 と読むようになったんですが・・・
池田の綾羽町には 「星の御門(みかど)」 と呼ばれる場所があり、暗くなると彼女達の元へ星が下りてきて その光で織の作業を続けたという伝説も残っています。

恋と星、そして綾織や水にまつわる 謎めいた神事。
この千年を超える優雅な伝説と風習は、形だけでもいいから 池田の町にゼヒとも復活させて欲しいと思うんですが・・・どうでしょ? 


  
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