忘れ得ぬ風景
- 2011⁄12⁄22(木)
- 02:18
何かの拍子に、ふっと子供の頃――それこそ明確な記憶がある筈もないような、小さい時分のことを鮮明に思い出すことがあります。
それは遠い記憶の断片、懐かしい風景というよりは 路地に落ちていた綺麗などんぐりや石ころであったり、湿った土や草いきれの香りであったり・・・今よりずっと近くて身近にあった、地面からの情報が殆どを占めていたような気がするんです。
もちろん泥だらけになって遊ぶことも好きでしたし、色んなものを拾ってきたり 地べたに座り込んで飽きもせず

アリの行列を眺めていたり (^^;)
よく転んで膝をすりむいたりもしましたが、とにかく地面が近かったという印象がありますね。
現在よりずっと沢山あった原っぱや 川縁の草むらに仰向けに寝そべって、青空や
星空を眺めた記憶がある方も多いんじゃないでしょうか。
幼い頃は 特に自分より低い位置にある小さなものに興味を示すことの方が自然だからでしょうね、一気に視界が広がって 別世界へ来たような気分になったのを覚えています。
人間が普通に立っている時 空というものは頭上に広がっているという認識しかできないのですが、一旦寝そべると これが真正面に対峙することになります。
仰向けで力が抜けるせいなのか 引力もあまり感じなくなり、ずっとそうしているうちに 空の方が遥か眼下にあるような感覚にとらわれる瞬間があるんですね

空へ真っ逆様に落ちてゆきそうな気がして、ふと気付くと両手でしっかり草を握ってたりして (^^;)
そんな、他人にはわからない ちょっとしたスリルを味わうのも好きでしたが・・・今になって考えてみれば、それが自分の今居る地球というものを 初めて意識した瞬間だったのかも知れません。
学校で天体のことを学ぶようになってからは、夜空の見え方も また少し変わりました。
天の川も 文字通り大きな星の川のように思っていましたが・・・実は平べったい渦巻きの大銀河、その一番外側の端っこから見てるのか~、と 妙に実感しすぎて ちょっと怖くなったことがありました。
一瞬ですが 自分が一人だけ宇宙空間に居て、銀河系全体を見渡しているような気分になってしまったんですね。
「銀河鉄道の夜」 を書いた宮沢賢治も、もしかすると毎晩 夜空をこんな風に眺めていたのかもしれないな~、なんて ふと思ったりします。

暫く星や宇宙の話が続きましたので、ついでにここで 人生の中でも最も印象的だった夜空の話をひとつ・・・
あれは今を去ること30数年前、僕が初めて南アメリカの地に足を踏み入れた時のこと。
まだスペイン語もおぼつかない学生の僕は、無謀にもリュックひとつで 単身アンデス山脈を放浪していました

明確な予定も大した予算もなく、訪れた地方の音楽を現地採取したり そこで購入した楽器でライヴに飛び入り参加させて貰ったりしながらの、ホントに行き当たりばったりの旅でしたね
旅行会社に保険を断られたり、途中のアンデス越えでは 『ここからは山賊が出るから、コレ持って行きな』 と安いリボルバーを売りつけられたり・・・今になって考えてみれば、よく何事もなく日本に戻って来られたもんです
ペルーでの想い出深い旅を終えた僕は、インカ帝国の首都でもあった古い街クスコから 高原列車に揺られてボリビアとの国境へと向かいました。
朝の7時に出発した列車が 延々と続くアンデスの風景の中 3000m以上の山麓を登ってゆき、チチカカ湖半の街プーノへ到着するのは午後8時。
終点のターミナルだというのに、既に辺りは真の暗闇で人通りも途絶え お店や人家の明かりどころか街灯の光すら見えません。
そんな中 殆ど手探り状態で辿り着いたのは、チチカカ湖を渡る小さなフェリー乗り場でした。
広大な湖のちょうど真ん中あたりにペルーとボリビアの国境があって、船に乗ったままそこを通過するんですが・・・それにまた一晩かかるんですよね
泊まっているホテルがそのまま移動してくれて 朝には自動的にボリビアへ入国できているという訳ですから、まぁ楽といえば楽なんですけど。
出港時間までは特にすることもなく 周りを散策しようにも真っ暗で何も無いので、アンデスの夜の空気でも吸うか・・・とチチカカ湖畔へ出てみることにしました。
明日はいよいよボリビアか~、と 水平線の彼方に視線を移した時、目にしたのは―――この世のものとは思えない程の、想像を絶する星空でした。
アンデスの薄い空気の中、またたきを止め輝きを増した星々が夜空を埋め尽くす その密度たるや・・・夜空の黒い部分の方が少ない、と感じてしまうほどです


地球上に居る限り これ以上は望めない位に澄んだ星空ですので、さぞや慣れ親しんだ星座もクリアに見えるだろうと思いきや・・・あまりに星の数が多過ぎて 逆に何処にあるのやら、さっぱり (^^;)
圧倒されるほどのスケールで 天の川が背中の地平線から立ち上がり、頭上を満天に輝きながら 巨大な弧を描いてチチカカの水平線へと降りてゆきます。
それだけでも生まれて初めて目にする凄い光景ですが、更に壮大な銀河は鏡のような湖面に映りこんで 僕が立っている足元の波打ち際まで・・・

星空、というより まるで自分が星々に囲まれて 広大な宇宙空間に浮かんでいるような、何とも不思議な体験でした。
あれはもう 二度と巡り逢えないかも知れない、一生忘れることの出来ない光景ですが・・・たとえCGを駆使して再現映像を作った処で、とても半分も伝え切れないのが残念でなりません
文章だけでは尚更ですけど・・・上の写真は 少~しイメージに近いかな、というのを探してみました。
世界遺産のマチュピチュやチチカカに浮かぶウロス島と共に プーノの街も観光拠点へと変わり、この30年で随分発展したと聞いています。
遠いチチカカの湖畔に、まだあの風景は存在しているんでしょうか・・・
それは遠い記憶の断片、懐かしい風景というよりは 路地に落ちていた綺麗などんぐりや石ころであったり、湿った土や草いきれの香りであったり・・・今よりずっと近くて身近にあった、地面からの情報が殆どを占めていたような気がするんです。
もちろん泥だらけになって遊ぶことも好きでしたし、色んなものを拾ってきたり 地べたに座り込んで飽きもせず



よく転んで膝をすりむいたりもしましたが、とにかく地面が近かったという印象がありますね。
現在よりずっと沢山あった原っぱや 川縁の草むらに仰向けに寝そべって、青空や

幼い頃は 特に自分より低い位置にある小さなものに興味を示すことの方が自然だからでしょうね、一気に視界が広がって 別世界へ来たような気分になったのを覚えています。
人間が普通に立っている時 空というものは頭上に広がっているという認識しかできないのですが、一旦寝そべると これが真正面に対峙することになります。
仰向けで力が抜けるせいなのか 引力もあまり感じなくなり、ずっとそうしているうちに 空の方が遥か眼下にあるような感覚にとらわれる瞬間があるんですね


空へ真っ逆様に落ちてゆきそうな気がして、ふと気付くと両手でしっかり草を握ってたりして (^^;)
そんな、他人にはわからない ちょっとしたスリルを味わうのも好きでしたが・・・今になって考えてみれば、それが自分の今居る地球というものを 初めて意識した瞬間だったのかも知れません。
学校で天体のことを学ぶようになってからは、夜空の見え方も また少し変わりました。
天の川も 文字通り大きな星の川のように思っていましたが・・・実は平べったい渦巻きの大銀河、その一番外側の端っこから見てるのか~、と 妙に実感しすぎて ちょっと怖くなったことがありました。
一瞬ですが 自分が一人だけ宇宙空間に居て、銀河系全体を見渡しているような気分になってしまったんですね。
「銀河鉄道の夜」 を書いた宮沢賢治も、もしかすると毎晩 夜空をこんな風に眺めていたのかもしれないな~、なんて ふと思ったりします。

暫く星や宇宙の話が続きましたので、ついでにここで 人生の中でも最も印象的だった夜空の話をひとつ・・・
あれは今を去ること30数年前、僕が初めて南アメリカの地に足を踏み入れた時のこと。
まだスペイン語もおぼつかない学生の僕は、無謀にもリュックひとつで 単身アンデス山脈を放浪していました


明確な予定も大した予算もなく、訪れた地方の音楽を現地採取したり そこで購入した楽器でライヴに飛び入り参加させて貰ったりしながらの、ホントに行き当たりばったりの旅でしたね

旅行会社に保険を断られたり、途中のアンデス越えでは 『ここからは山賊が出るから、コレ持って行きな』 と安いリボルバーを売りつけられたり・・・今になって考えてみれば、よく何事もなく日本に戻って来られたもんです

ペルーでの想い出深い旅を終えた僕は、インカ帝国の首都でもあった古い街クスコから 高原列車に揺られてボリビアとの国境へと向かいました。
朝の7時に出発した列車が 延々と続くアンデスの風景の中 3000m以上の山麓を登ってゆき、チチカカ湖半の街プーノへ到着するのは午後8時。
終点のターミナルだというのに、既に辺りは真の暗闇で人通りも途絶え お店や人家の明かりどころか街灯の光すら見えません。
そんな中 殆ど手探り状態で辿り着いたのは、チチカカ湖を渡る小さなフェリー乗り場でした。
広大な湖のちょうど真ん中あたりにペルーとボリビアの国境があって、船に乗ったままそこを通過するんですが・・・それにまた一晩かかるんですよね

泊まっているホテルがそのまま移動してくれて 朝には自動的にボリビアへ入国できているという訳ですから、まぁ楽といえば楽なんですけど。
出港時間までは特にすることもなく 周りを散策しようにも真っ暗で何も無いので、アンデスの夜の空気でも吸うか・・・とチチカカ湖畔へ出てみることにしました。
明日はいよいよボリビアか~、と 水平線の彼方に視線を移した時、目にしたのは―――この世のものとは思えない程の、想像を絶する星空でした。
アンデスの薄い空気の中、またたきを止め輝きを増した星々が夜空を埋め尽くす その密度たるや・・・夜空の黒い部分の方が少ない、と感じてしまうほどです



地球上に居る限り これ以上は望めない位に澄んだ星空ですので、さぞや慣れ親しんだ星座もクリアに見えるだろうと思いきや・・・あまりに星の数が多過ぎて 逆に何処にあるのやら、さっぱり (^^;)
圧倒されるほどのスケールで 天の川が背中の地平線から立ち上がり、頭上を満天に輝きながら 巨大な弧を描いてチチカカの水平線へと降りてゆきます。
それだけでも生まれて初めて目にする凄い光景ですが、更に壮大な銀河は鏡のような湖面に映りこんで 僕が立っている足元の波打ち際まで・・・

星空、というより まるで自分が星々に囲まれて 広大な宇宙空間に浮かんでいるような、何とも不思議な体験でした。
あれはもう 二度と巡り逢えないかも知れない、一生忘れることの出来ない光景ですが・・・たとえCGを駆使して再現映像を作った処で、とても半分も伝え切れないのが残念でなりません

文章だけでは尚更ですけど・・・上の写真は 少~しイメージに近いかな、というのを探してみました。
世界遺産のマチュピチュやチチカカに浮かぶウロス島と共に プーノの街も観光拠点へと変わり、この30年で随分発展したと聞いています。
遠いチチカカの湖畔に、まだあの風景は存在しているんでしょうか・・・
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なんとー
地球に寝そべって空を眺めていると落っこちそうになる…よく似たことしてますね、インティワタナさん(^^;;
それから、チチカカ湖の星空の風景、良いですね、星空を舟で渡る…なんて実にロマンチックだと、我々なんかは思ってしまいますが、そこに暮らす人にとっては風景の一部、神話や伝説も夢物語ではないのかも…いやー、日本もかつてはそうだったのかな、なんて改めて考えさせられますね。土や風、空の星と話が出来なくなったのは、いつからなんでしょうね。